さんま前線異状あり

 

 秋刀魚が大変なことになっているらしい。否、正確には秋刀魚自身ではなく、秋刀魚の恩恵に与る我々、人類が。

 ある日、突然。

 七輪の上でパチパチと身を爆ぜ、夏の暑さで疲れ果てた味覚を、唐突に揺り起こす香ばしさを身にまとう、あの魚が消えてしまったら。

 

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 秋刀魚が去った地球で我々が生き続けることほど、残酷で切なく、そしてともかく、腹が減ることはない。秋刀魚だってそう思っている、とは思わないが。

 ただ、我々が秋刀魚を恋しがるのは食べたいからで、秋刀魚が弁護士を呼んでしまえば、すぐにでも罪科をあげつらい、瞬く間に勝訴するに違いない。そうしたら、今度は私がその弁護士を呼ぶ番だ!

 

 そんな妄想に毎日、水をやり花を咲かせてみたところで、空腹というものは待ってくれない。

 彼らにはそもそも、待つという概念がない。それどころか、そもそものそもそも、空腹は「彼ら」ではない。

 

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 さて、これから先、気温が下がっていき、手足がよく冷えると言う場面が増えるだろう。

 私だって三十路を右折した頃から、特に足が冷えると感じる様になり、「あそこを左折していたら違う人生が…」と感慨に耽る様になった。遠い目をしながら、だ。

 人生は常に正しい道筋を示さず、選んだ先でどう対応するかを、ほくそ笑みながら観察しているらしい。

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 身体は神経系、内分泌系、そして免疫系といった三本柱に支えられている。もっと細かく言えば三本どころではないけれど、それは置いといて。

 それらは外界のあらゆる刺激に反応し、身体機能が乱れたり崩れないよう、まるで高層ビルの耐震構造みたいに調節する。

 

 それだけでも身体の負担は馬鹿にできないのに、最近ではなんやかんや、過労気味に思える。社会全体、あるいは人類そのものが。秋刀魚だって嘆いているはずだ、自信はないけれど。

 過労で緊張が高まれば、交感神経が休まず働き詰め、心底からリラックスすることさえできなくなる。

 

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 多忙に多忙を重ね身を粉にすればするほど、堪え難い辛さや苦しさが積み重なり、 それでも逃げられない毎日。もし、そんな日々の片隅にひとつまみ。

 ひとつまみの休息が得られるなら、鍼灸師としてその一助を担える存在でありたい。

 全身の機能をゆっくり中庸へ。ある時は降り注ぐ木漏れ日のように、またある時は穏やかな波のように。痛みは和らぎ、冷えは徐々に温もりへ。

 

 鍼と灸。私にはそれだけでいい。

 

 ところで、秋刀魚はどこいったんでしょうね。